脳科学・遺伝学に基づく「催眠療法」に関連した補足解説

催眠の歴史 及び 現状

脳科学・遺伝学に基づく「催眠療法」のP.345の追記
 
催眠の歴史は非常に古く、古代エジプトやギリシャの神殿で何らかの形で行われていたとされています。この時代の催眠は、宗教的な儀式や祈り、神々とのコミュニケーションを可能にするものとされていました。しかし、現代の科学的な理解とは異なる形での催眠でした。
 
現代的な意味での催眠の始まりは、18世紀に遡ります。オーストリアのウイーンで医学を学んだ医師フランツ・アントン・メスメル(Franz Anton Mesmer)は、自身が"動物磁気"と呼んだ概念を提唱しました。これは人間の体内に流れるとされる"自然のエネルギー"を調整することで、病気を治療できるという考え方でした。メスメルはこれを操るために催眠のような手法を用い、これが"Mesmerism"(メスメリズム)と呼ばれるようになりました。

 
19世紀に入ると、催眠はより科学的なアプローチに基づくようになりました。英国の外科医ジェームズ・ブレイド(James Braid)は、催眠を通じて起こる現象を神経学的な視点から分析し、"催眠"(Hypnosis)という名前を初めて提唱しました。彼は催眠を一種の睡眠状態と見なし、それが患者の精神状態や感覚を変化させることを認めました。
 
20世紀に入ると、催眠は心理療法の一部として広く認知されるようになりました。精神分析学の創始者であるジークムント・フロイトは、初期の段階で催眠を用いていました。その後、催眠は認知行動療法(CBT)や他の心理療法の中で有効なツールとして認識されるようになりました。
 
21世紀に入り、脳イメージング技術の進歩とともに、催眠が脳にどのような影響を与えるのかをより詳細に研究することが可能となりました。これにより、催眠の理解はさらに深まっています。
 
催眠の歴史は、古代の宗教的な儀式から現代の心理療法まで、幅広い範囲に及びます。それは科学、医学、心理学の中で、その役割と理解を進化させ続けてきました。
 
現在、アメリカでは、催眠は心理療法や精神医療の中で広く用いられています。大学や研究機関においても、催眠を用いた治療法の効果についての研究が盛んに行われており、その結果は学術誌や学会で発表されています。
例えば、クリニカルな催眠を研究するための専門団体である
American Society of Clinical Hypnosis(ASCH:アメリカ臨床催眠学会)は、催眠療法の研究と教育を推進しています。
 
また、イギリスでは、心理療法やカウンセリングの一部として催眠が用いられ、また催眠に関する教育や研究も盛んに行われています。代表的な学会としては、 British Society of Clinical and Academic Hypnosis(BSCAH:イギリス臨床学術催眠学会)があります。
 
日本においても催眠は医療や心理療法の一部として採用されていますが、アメリカや一部のヨーロッパ諸国と比べると、その認知度や利用度はまだ低いといえるのが残念です。
日本の医療機関や臨床心理士などが催眠を治療法として活用することもありますが、その一方で、催眠についての誤解や偏見、またその効果を過大に宣伝する不適切な利用なども見受けられ、一部の人々からは疑念を抱かれることもあります。
しかし、近年では、催眠の効果や適用可能性についての研究が進展しており、その有用性が認識されつつあります。
日本の権威ある催眠学会である日本催眠学会は、その分野で広く認知されている組織となっています。それは日本における催眠療法の研究と実践のための主要なプラットフォームで、多くの専門家や研究者が参加しています。
 
ヨーロッパにおいてもフランスなどで催眠は広く認識されており、医療や心理療法の一部として採用されています。催眠の臨床的な利用を研究・推進する学会や組織が存在しますので、以下にいくつか例を挙げてみます。
 
  1. European Society of Hypnosis(ESH): ヨーロッパにおける主要な催眠療法の学会で、各国の催眠学会を結びつける役割を果たしています。
  2. Australian Society of Hypnosis(ASH): オーストラリアの主要な催眠療法学会で、クリニカルな催眠を教育、研究、実践の推進に尽力しています。
  3. Society for Clinical and Experimental Hypnosis(SCEH): アメリカでも重要な学会で、催眠の研究と臨床的応用に重点を置いています。
  4. Milton H. Erickson Foundations: 催眠と短期療法の研究を推進するための国際的な組織で、マイルトン・エリクソンの手法を継承しています。
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これらは一部の例で、各国には様々な規模の催眠に関する学会や組織が存在します。それぞれが催眠の研究と教育、およびその臨床的な応用を推進しています。また、これらの学会はしばしば国際的なコンファレンスを開催し、その場で最新の研究成果が発表されます。
 
国際催眠学会(International Society of Hypnosis, ISH)は、全世界からの催眠に関する研究者や専門家が集まる国際的な組織です。その目的は催眠と催眠療法の研究、教育、臨床応用の促進であり、定期的に会議や学術的な出版物を通じて知識の交換や進歩を推進しています。

 
 
 
脳科学・遺伝学に基づく「催眠療法」補足解説 マインド・サイエンス独自の催眠療法