催眠が及ぼす脳への価値の解説
催眠療法や自己催眠によって催眠状態を日常的に活用することで、人生の価値についてもう少し詳しく見つめていきたいと思います。
催眠状態に馴染むことで、無意識の深い領域へのアクセスがスムーズになります。その結果、現状に不安があるとしても、自己との対話を深めることで、安定感や指針を感じ得ることができるようになります。
未来の出来事に絶対的な確信を抱くことは難しいかもしれませんが、心の安定は得られます。
これは、不安や悩みに圧倒されず、今やれることに専念することを助けてくれる心境へと導いてくれます。明確な根拠がなくても、心は安らぐのです。そしてその結果、事態は好転して、もっと良い人生へと導かれていくのです。
また、催眠状態に慣れていくと、人生の様々な瞬間に、直感や内なるメッセージが手助けとなり、多くの決断やタイミングへの気づきを得やすくなります。
今必要とすることへの直感やひらめきが鋭くなり、今やらなければいけないことがあれば、必要なアクションをとる最適な時期を、ふっと気づかせてくれるようにもなっていくのです。
では、脳内の変化について説明します。
催眠状態と脳に起こる変化についての研究は、近年の神経イメージング技術の進歩によって進展を遂げてきました。以下は、催眠状態に関連する一部の脳科学の知見です。
催眠状態に入ると、前頭前皮質の活動が低下することが示唆されています。この領域は批判的思考や自己評価に関連しているため、その低下は、被験者が指示や提案(暗示)に対して受け入れやすくなることを示していると考えられます。
また、催眠状態は、一部の領域での脳の反応性を高める可能性があります。これにより、催眠誘導時の指示や提案(暗示)に対する反応(被暗示性)が強まると考えられます。
また、催眠によって変化する脳のネットワークがあります。デフォルトモードネットワークは、特定の外部タスクに従事していないとき、つまりリラックスした状態や内省(内面への思考)時に活動が高まる脳領域のネットワークです。このネットワークは、過去の経験や未来の計画、他者の考えを推測する際の思考、自己に関する思考など、自我や自己認識に深く関わる機能を持っています。
デフォルトモードネットワークに関与する主要な脳領域には以下のようなものがあります。
- 前帯状回 (anterior cingulate cortex: ACC) - 感情や自我と深く関連している領域。
- 後帯状回 (posterior cingulate cortex: PCC) - 自己認識や空間的認識に関与している。
- 前頭前野 (medial prefrontal cortex: mPFC) - 他者の考えを推測する能力や自我に関与。
- 側頭前皮質 (lateral temporal cortex) - 記憶や理解に関与。
- 下側頭回 (inferior temporal lobe) - 物体認識などに関連。
- 角回 (angular gyrus) - 文字や数の理解、自己と外界との関係性の理解に関与。
これらの領域は、連携して活動することで、自我や意識、自己認識といった複雑な認知機能をサポートしています。デフォルトモードネットワークの異常な活動は、様々な神経精神疾患と関連しているとも考えられています。