第2章 脳内の条件反射回路
 
 では、症状をこじらせてしまった場合、どう対処すべきでしょうか。どうすれば正常に戻せるのでしょうか。

 症状を長引かせてしまうと、脳内では、症状体験の条件反射回路が形成されてしまいます。条件回路はちょっとした条件刺激(似たような環境や状況)で条件反射(過去に苦しんだ経験による症状)が発生します。頻繁に活性化することがあると、さらに脳内のシナプス回路(第5章P.258 ~)が強化されていきます。
 ですから、脳内に形成された条件反射の回路を修正する必要が出てくるのです。

 こうした作業には、「催眠療法」が最も好ましく、打ってつけといえます。

 症状を体験している間は、その症状の体験が脳に刻み続けられていきます。そうした症状の体験による脳内の条件回路を修正することにおいて、催眠状態を活用した心理療法(催眠療法)は多大な効果を上げることができます。

 相談に来られる多くの人が、10 年も20 年も貴重な人生の中で悩み苦しみながら、生活に支障が出ている状態に耐えて、なんとか生きています。

 若い人の場合はむろんですが、50 代、60 代、70 代の方々からの相談を受ける時、もっと早い時期に原因を理解し、適切な対処をとることができていたら、簡単に治せて、もっと違ったより豊かな人生を送れたのにと、いつも残念に思います。

 人は、誰もが幸せを願って生きようとしています。苦しみながら送った人生の時間に意味があるのでしょうか。取り返しがつかない人生の時間となってしまいます。

 しかし私は、できれば失った時間にも意味があってほしいと願っています。その意味をどのように見出すかによって、その後の人生がより充実した後悔のないものへと変わるのではないかといった、人生の深遠さに救いを求めながらも、人生とは何だろうと考えてしまいます。しかしながら、残りの人生が幸せと充実感で満たされることを、私は心から祈っています。

 
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