第1章 記憶の抑圧
トラウマを引き起こす原因となっている出来事(エピソード)は、なかなか意識しづらい状態になっています。
これを記憶の抑圧と呼んでいます。人は苦痛となる過去の出来事の記憶を、いつまでも意識上に存在させていたのでは耐えられないのです。ゆえに、過去の記憶で苦しまないように、無意識の世界に追いやって(抑圧して)しまうのです。
この抑圧された過去のエピソードと感情(の記憶)が、例えば、親との関係であったとすれば、それがトラウマだと本人は認識できていない場合が多いのです。それはあまりにも日常的な出来事であり、子供時代の環境としてその状況を受け入れざるを得なかったからです。
子供時代の成長過程では、幼い精神状態のため的確な判断や批判の能力はまだ確立されておらず、自分が受け入れざるを得ない状況の中で我慢して過ごしています。しかし、そのような経験が将来どのような影響を及ぼすかを子供たちは知る由もありません。
こうした幼児期からの“ 過去” は人生に重くのしかかっているという現実を理解してほしいのです。幼いころの無自覚な記憶が、人
間関係にも深刻な影響を与え、心の病や精神的苦痛を引き起こすとが多いのです。
無意識に抑圧された記憶が、私たちの心の深層に潜在的に存在しているため、日常生活や精神的な健康に影響を与えていることに気づかされることは少ないでしょう。私たちが抱く肯定的あるいは否定的な感情や思考に影響を与える根源が、無意識の領域にあるという現実は、多くの人にとって認識されていないのです。
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