第1章 許すことができない
自分が親から受けた過去を許すことができずに引きずっている人がいます。
幼少期の生育環境でのトラウマによくある苦悩です。他人との恨み、憎しみの感情や関係を引きずっている場合もありますが、他人よりも親子関係のほうが切実で切り離し難いものです。
そのように親や誰かを許せないことで、無意識に縛られた憎しみや怒りの感情が持続して、心や身体の症状や精神状態から自らを解放できないで苦しみ続けているケースがあります。
こうした許せない傾向が強い人は、第2章(P.74 ~)のOCD 傾向を参照されてください。
許せない心の苦痛から解放されるためには、やはり「理性の理解と感情の納得」が必要です。
幼児期からの子供時代において、その当時、親が置かれていた環境や精神状態を子供の立場からは到底理解できません。それゆえに、自分が親に愛されていないとか、必要とされていないなどの寂しい感情を抱き、親への要求を我慢して孤独な精神状態で成長してしまいます。それによって、そうではない親子関係で育った人への羨ましさや自分の親への無自覚な反発心、怒りや不満が生じて、精神的距離感が生じます。親子間で心の絆が成立しないのです。
当時の親の心情を成長した心で理解することで、理性的理解による許しの感情が生まれます。心が納得することで、心の囚われからの解放が生まれます。
誰もが、自分の親からは愛されたいという本能を持ち生まれています。そうした感情が満たされていないのです。
子供時代の環境を何気ない会話や催眠状態で思い出してもらう中での、重要かつ必要なことは、客観的洞察による“ 気づき” なのです。それによって、自分を無意識にかばったり慰めたりする必要がなくなってくるのです。なぜなら、幼少期の真の心情に触れることが、自分を深く見つめ、その結果を自分の未来に必要な情報として捉えられるようになっていくからです。
親との関係が悪かったことで、家庭や子供を持つことなく一人で暮らすことを選択される人もいます。そのような場合も同じことで、許すという心の浄化が生じていない人生では、無意識に精神的葛藤の影響を受け続け、何かの日常の出来事が刺激となって、急に気分が沈んだり、悲しくなったり怒りが生じたりといった精神的な変に見舞われ、それが強く出た時には身体症状も伴う場合があります。
よく耳にするのは、寝ている間に体に力が入り筋肉が力んだ状態で、肩が凝ったり手を強く握り締めて目覚めたり、歯ぎしりをしていて歯がボロボロになり悩んでいると訴えられることです。
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