第1章 心の深層
 
 以前相談を受けた若い男性が、「自分が描いた絵を見た全ての人が、不幸になっていくような絵画を完成させたい」という暗い思いを語っていたことを思い出します。

 もし誰かが、気持ちが暗くなっていくような、不幸になるような絵画を自分の部屋に飾っていて、それを無意識に目にする機会が多いとしたら、その人の心は暗い世界へと引きずられていくことでしょう。

 人の過去における記憶という部屋の中に、絵画が象徴するような暗い世界が存在したら、その人の未来に影響を及ぼさないはずがありません。

 それはまさに人が「黒歴史」と呼ぶ、過去に体験した思い出したくもないことの人生の記憶が含まれます。

 人は大なり小なり、墓場まで持っていきたいような人には言えない、または思い出したくもない後悔している過去の経験の記憶があるものです。それはトラウマと呼ばれる心の傷を作っている記憶ともいえます。

「はじめに」でお話ししましたように、過去は人々の未来の人生に深く関わってきます。それゆえに、未来の人生をもっと良いものへと変えるためには、過去の清算が必要なのです。

 このあと説明しますマインド・サイエンス独自の「退行催眠療法」は、こうした過去の記憶の支配から自己を解放させ、未来を変えるための展開の流れといえます。単に、催眠状態で過去のトラウマを思い出させるだけのものではありません。人は催眠状態でなくても、ちょっとしたきっかけで過去の嫌な記憶が脳裏を霞むことはよくあるものです。そうした時に、思い出した昔の自分をどのように捉えるかによって、暗い世界へと落とされる“ 絵画” を眺めることと同じような影響を心は受けるものなのです。

 
脳科学・遺伝学に基づく「催眠療法」の一部を読むサイトマップへ戻る