第2章 心の病の背景
 
「心の病」の症状は、脳機能の不調を長期間持続したことから起こり始めます。

 なぜ脳が機能不全にいたるのでしょうか。

 それは長期にわたる精神的ストレスが脳内の環境を壊し、脳の働きを混乱させるからです。その結果、自律神経の失調や内分泌系、免疫系の異常などにより体調不良が生じます。

 この後、脳にストレスを与える要因の具体例を交えながら話を進めますが、発症当時のストレスだけに焦点を当てるのではなく、そのストレスに反応した過去のトラウマを見落としてはいけません。

 自分の過去を客観視して見つめ直すことは、無自覚に自分が受けていた悪影響から心を解放させていくことにつながります。

 そのために前章でお話ししました「心理療法としての会話」が必要になります。言語化の不十分な情動的記憶というものが、その人の心や行動を無意識のうちに支配し、ネガティブな反応や感情の暴走、解離といったことを引き起こす原因になっているからです。

 皆さんも、読み進めていかれるうちに、いくつかの共通する背景がいかに重要な問題を含んでいるか、個人的な部分がどういうものかを明確に理解していただけると思います。

 こうした共通の背景に該当している原因による症状は、対症療法としての薬物投与だけで治すのは困難だと分かっていただけることでしょう。

 
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