第2章 原因が分からないから不安になる
 

「心の病」や精神的苦痛は、身体の病気と同様、原因が分からないと人は不安になるものです。治療を始めて納得のいく原因が分かれば、人は安心でき、症状の進行を止める努力もできます。

 人が何かで悩むということは、一般的には精神的成長につながるものです。しかし、無意識からの働きかけが強く、悩みや苦痛を制御できなくなったらおしまいです。無自覚で不明確な強い力でストレスに押しつぶされていきます。

 無意識からの働きかけとは、幼児期からの抑圧された記憶で、母子間のトラウマがほとんどですが、これが全てではありません。全く違った要因が複数絡むこともあります。

 例えば、遺伝によって受け継がれた気質や能力などが絡み、環境との適応に悩みが生じていたりした場合、それゆえの生きづらさによる精神的苦痛の記憶などが挙げられます。

 非常に個人的な問題で、意識上抑圧されてしまう内容も多く存在します。それらほとんどが明確に意識化できていないのです。意識化できていないので、対処のしようがありません。

 したがって、自分一人で過去のトラウマの記憶に目を向けてみても、適切で必要な記憶の想起が難しい場合が多々あります。それは、ほとんどの場合、自分自身の過去を客観視できないからです。これについても、この本を読み進めていただく過程で理解していただけるものと思っています。

「心の病」が、精神的原因に焦点を当てることなく薬物治療で簡単に治れば良いのですが、治らなかった場合、不安がさらに高じて症状も悪化し、治るという実感を抱けなくなり、治すことを諦めてしまうこともあります。または、薬で症状をある程度抑えることができれば、その薬に依存してしまうこともあります。

「心の病」などの精神的問題を生み出しているのは私たちの“ 脳”です。

 脳の働きが正常でないと、脳の活動で作り出される心に何らかのトラブルが生じてきます。
 
脳科学・遺伝学に基づく「催眠療法」の一部を読むサイトマップへ戻る