退行催眠とは、催眠状態で過去にさかのぼる年齢退行という技法を用いて、過去の経験を思い出させ、時には感情を伴った再体験をさせることです。
催眠療法において退行を行うときは、現在に影響を及ぼしている幼少期の出来事を思い出させて、トラウマとの関連を探ります。
心の病を治すことや精神的苦痛から解放させるために、退行催眠によって、意識上によみがえってきた過去の記憶の中から、無意識に抑圧されている幼少時の心的苦悩と、今の精神的苦しみや心の病との関係を分析することが重要になります。
幼少時を含め過去の人生で関わった様々な出来事が、どのようにその後の人生に影響を与えたものかを真に理解し判断する為には、専門の知識が不可欠です。
また、退行催眠の技法にかかわらず、催眠状態では、普段は思い出すことがない抑圧された記憶が思い出しやすくなっています。
しかし、催眠状態に導き、現在の苦痛や心の病の原因になっている出来事を引き出そうとしても、いつも都合よく無意識の中に抑圧された、それらの“原因となる記憶(トラウマ)”を簡単に引き出せるとは限りません。
そこで、マインド・サイエンスでは、催眠感受性(催眠にどのように反応するかの特性)の個人差を埋めるため、相談者の催眠状態で容易に引き出せる記憶にのみ頼ることなく、的確な心理療法を背景とした誘導により、トラウマとなった出来事の記憶へと導いていきます。また、場合によってはあまりにも強い抑圧のために、そう簡単には原因となる記憶の意識化が出来ない場合もあります。また、幼児期の出来事が、本人にそれほど大きな問題として自覚されていない場合、または、他の人も自分と似たり寄ったりだろうと意識上は考えて成長してきた場合などは、退行催眠中に原因となる記憶がよみがえったとしても、そのことが無視され報告されないこともよくあります。こういったケースで、原因がつかめないままで時間が過ぎるというミスを起こさない為にも、相談者の心の苦しみの背後に潜む原因をあらかじめ心理療法としてのカウンセリングの中で見出しておいて、その裏付けを問うような誘導も必要となります。
このように、心の病などの傾向や問題点を知り尽くした専門的知識が必要になります。また、催眠状態で何らかの記憶がよみがえれば、それで問題のすべてが解決するわけでもありません。その後の“心”への働きかけと処理(ケア)が療法としての価値が問われるところでしょう。催眠に深く入れない人も、入れる人も、そういったことに関係なく、原因となっているトラウマを十分に見つけ出し症状や悩みの解決がはかれるのです。