私自身若い頃は非常にあがり症でした。
今の私しか知らない人は、誰も信じられないと思います。
人前であがるという現象は、交感神経の異常興奮によって生じます。
そうなる原因は、人さまざまですが、一般的には生育環境の中で、人に良く見られたいという思いが強く育っていて、自分がどう評価されるかを非常に気にしてしまう心の癖がついているのです。
それ故に、自信もあるし、ことさら自分を良く見せる必要がない人達の前ではあがるということはありません。
あがり症や緊張を治すためには、
まず始めに、人それぞれのあがるようになった原因を解明する必要があります。
次に、
これまで人前であがった経験によって形成された条件回路を修正しなければなりません。
正確に表現すれば、修正というより新たに作り変えると表現した方が適切でしょう。
交感神経の興奮する癖を治さなければなりません。
こうした一連の原因の解明と改善は、浅い催眠状態で行うことが理想的なのです。
どのような原因が、あなたのあがりや(対人)緊張を作り出していたとしても、あなたはどのような状況におかれても、必要な場合瞬時に、腹が据わった状態を作れるようになります。
そうして、あなたは“にこやかに”やるべきことを行っていくだけなのです。
「社交不安障害」「社会不安障害」(SAD)という心の病の分類があります。
単に人前で自己紹介をしたり、発表をすることが恥ずかしいという程度ならまだしも、声が震え身体も震えてくるようで出来ない、または頭が真っ白になって状況が見えなくなるとなると、改善する必要があるでしょう。
社交不安障害は、いくつかのタイプに分けられますが、人前での話だけではなく、電話での会話だったり、食事だったり、字を書くと手が震えたり、試験を受ける時などの緊張だったりと様々です。
問題なのは、症状がでることを気にしたり怯えて、それを避けようとすることで社会生活に支障が出てしまうことです。
無理して努力しているうちに、慣れてくれば良いのですが、慣れるどころかさらにひどくなってしまうのです。
さらに、そうした自分を気にして大きなストレスを受け続け、自己嫌悪にも陥り精神的に苦しみます。
学校や職場を辞めてしまう場合もあります。
いったんそうして現実の苦痛から逃げることが出来ても、生きている以上人との関わりは生じます。
特に女性の場合、職場から逃げて、退職、結婚、出産と進み、子供の成長の過程で、公園デビューや幼稚園への入園と役員などの活動、小学校・・・と、母親としての社交的場面が生じるのです。
男性の場合は、職場内の問題はうまく避けて過ごしても、子供の結婚式のスピーチで苦しまれることもあります。
どうしても逃げられない状況に追い込まれ、やっと相談に来られています。
努力して慣れていく人と、どんなに努力しても慣れるどころかさらに症状が悪化していく人との違いはどこにあるのでしょうか?
その答えは、簡単です。
トラウマがある人とない人との違いなのです。
もう1つは、気質という個人差も影響します。
過去におけるトラウマ体験(緊張・あがり・赤面・失敗・羞恥心・不安・恐怖)は、心である脳内に深く回路を刻み、条件反射としての反応が形成されます。
この条件回路は経験記憶という単純なものではありません。生理反応を再現する情動記憶なのです。
したがって、過去の体験と同じ生理反応(緊張・震え・赤面・吐き気・羞恥心・不安)が身体と心に再現し始める状態を察知すれば、さらなる不安や動揺(予期不安)によって強い症状が実際に誘発されます。
薬を飲んでどうにかごまかしていても、だんだんと薬が効かなくなる人も、背景にトラウマなどの原因となっている心の要因が潜んでいるからなのです。